ここ最近、バックヤード(パソコン関連)ネタが多く工房から遠ざかっていました。久しぶりに工房に入って、周りを見渡していると引き廻しノコギリが目に入ってきました。
目に入ってきたのは引き廻しノコギリの「プラスチックの柄」でした。ちょっと味気ないなあ~。
ということで柄を作ってみよう!
たぶん、伏線は、この間作ったピックアップツールが影響していそうだ。
引き廻しノコギリとは
引き廻し(ひきまわし)ノコギリって、曲線状に板材などを切ることができるノコギリです。自在に歯の向きを変えられるようにノコ身が細くなっているのが特徴です。簡単にいうと電動ジグソーの手工具版ですね。
柄の作成
それでは、柄を作っていきたいと思います。材料にはウォールナットの端材を使います。ピックアップツールの時は栗の木で作りました。ワックスのノリがイマイチだったので、ウォールナットにしました。
ウォールナット端材に引き廻しノコギリの柄を置いてトレースします。
トレースして、必要長さにカットしたところです。
テーブルソーで柄の厚みに引き割ります。材料を幅10㎜、高さ55㎜ほどにカットするため、テーブルソーのブレードがむき出しになり、ちょっと怖いですね。
こういうときは、材料に手を添えないように板切れで押さえてカットします。
柄になる2枚の板を切り出しました。
両面テープで2枚を張り合わせた状態で加工していきます。そうすれば、2枚の輪郭が崩れることなく形を作っていくことができます。
早速、バンドソーで輪郭をカットしていきます。
輪郭を荒どりします。気持ちよく曲線を切ることができます。
凹んだところも容易にカットできます。
荒どりの後は、定番のディスクサンダーでカットした面を研磨します。まだ、角は丸めません。
ディスクサンダーで研磨したところです。凹んだところはディスクサンダーではできないのでドラムサンダーで研磨します。
ドラムサンダーのセットです。
下側の黒色のものがラバードラムです。上側の茶色のものが筒状のサンディングペーパーです。
筒状のサンディングペーパーをラバードラムにはめます。
はめただけではサンディングペーパーは抜けてしまうので、ナット部を締め付けます。締め付けるとラバーが押し縮められることで太く拡張して、サンディングペーパーと密着し固定されます。
また、回転したときに緩まないようにナットは逆ねじになっています。
ボール盤にサンディングドラムを取り付けて使います。
こんな感じで、短時間で凹んだ面もきれいに研磨することができます。
柄の輪郭が出来上がりました。ここまで1時間程度です。
ノコ刃の固定部の作成
この引き廻しノコギリは替え刃式なので、替え刃を固定できるようにする必要があります。
まずは、替え刃の位置を決めるために柄に輪郭をトレースします。
替え刃は2枚の柄に挟まれるように固定します。挟めるように2枚の柄の間に1㎜幅で深さ30㎜程度の切り込みを入れます。
柄をしっかりクランプで固定します。
写真の赤い線のところに切り込みを入れます。
ノコギリで曲がらないように真っすぐ切っていきます。
後で思ったのは、ノコギリではなくトリマーを使った方が楽だったように思います。
気持ちは真っすぐのつもりでしたが曲がってしまいました。(涙)
結局、曲がった分をディスクサンダーで研磨して修正しました。
どのように固定するか考えた末に行き着いたのは、リベットを使うことでした。手持ちのリベット頭の直径が替え刃の二股部の幅と同じ8㎜だったことが決め手でした。
ただし、このままではリベットが長すぎるので短くする必要がありました。
厚み5.5㎜のシナ合板の端材に開けた穴にリベットを差し込み、飛び出したところをカットします。こうすればリベットも固定出来て、カットしやすくなります。
ここでもバンドソーの出番です。ブレードをシナ合板の板に沿って切ればよさそうです。
リベットの材質はアルミです。アルミ金属を切るため、木材を切るときの半分以下の速度にします。
木材の時:60Hz(モーターが60回転/秒)
金属の時:30~15Hz
今回は柔らかいアルミなので26Hzにしました。
思った通りに切断することができました。
柄の裏面にリベットを差し込むΦ4の穴をあけます。貫通しないように注意して開けます。
開けた穴にリベットを差し込み、替え刃を置いてみたところです。替え刃の二股部にリベット頭がぴったり嵌っているのがわかります。悩んだ甲斐がありました。
柄の研磨
替え刃の固定部ができたので、もう一度柄を両面テープで張り合わせて、外観の角をディスクサンダーで研磨して丸めます。
研磨したところです。角が丸まり柄らしくなってきました。
凹んだところはサンディングドラムで丸めていきます。
全体の研磨ができました。グッと柄(絵)になってきました。
仮組してみました。いい感じです。
替え刃の留め具の作成
替え刃はネジ止めの機構になっていますので、Φ8の下穴を開けました。
大きな穴をあけるので、柄の材が割れたり、バリがでないように表面、裏面共マスキングテープで覆います。特に裏面は何重にもテーピングします。表面はきれいに開けられました。
裏面もテープを剥がして確認しました。割れもなくよかったです。
下穴にネジをつけるため、M6の鬼目ナットを使います。柄の厚みが10㎜もないので余った鬼目ナットを切断します。リベットの切断の応用です。直接、鬼目ナットを柄に付けた状態でバンドソーで切断します。
バンドソーは、目の細かい金属用のブレード(フナソー コンターマシン用ブレード)に交換しています。
鬼目ナットの材質は亜鉛合金で強度がありますので、バンドソーの速度は17Hzにまで落として切削しました。柄を傷つけることなく切ることができました。
廉価な木工用バンドソーだと変速機能がないのでそのままでは切断加工は難しいですね。
こんな感じです。苦心の跡が見られます。まあ、見えなくなるところなのでご勘弁。
こんな風に替え刃はネジで固定します。
留め具のところの表面はこんな感じになりました。落ち着いた感じに治まりました。
留め具のネジ頭が収まるようにもう1つの柄にΦ16の貫通穴をあけます。柄の大きさに比べて大きめの穴になります。割れ、バリがでないようにテーピングしておきました。
大きな貫通穴になりました。
2枚の柄は、両面テープで貼り合わせることにしました。ネジ止めも考えましたが、できるだけ表面はいじらないようにしておきたかったので止めました。
加工時に両面テープで貼り合わせて、しっかりくっ付きズレも発生せず、剥がすこともできたので問題ないと判断しました。
しっかり貼り合わせられました。
柄のお尻側の貫通穴は紐を通す用に開けました。
柄の仕上げ加工
すべての作成は終わりましたので、仕上げに取り掛かります。
分解して、柄を仕上げます。柄を#240サンドペーパーで中仕上げして、さらに#1000で仕上げ磨きをします。
仕上げ磨きまでおわりました。木目がきれいに出て、光沢もでてきました。最後にウォールナットのワックスを掛けて磨き上げます。
出来上がりました。紐には手芸店で購入した4㎜のレザーコードを使ってみました。いい雰囲気でますね。
手に持った感じもしっとりと手に吸い付くような感じです。単なる引き廻しノコギリだったのに愛着が沸いてきますね。
工房の定位置に戻しました。引き廻しノコギリの刃がむき出しなのでカバーを付けたいところです。さらに、実は後ろにもう一本同じ柄のノコギリがあります。これも柄を作りたいです。
今回の作業時間と費用は以下の通りです。
作業時間:6時間
費用:レザーコード(90㎝):418円