前回のおさらいです。前回は露光機のタイマーの部品を納めるケースを3D CADのDesginSpark Mechanicalを使って設計しました。
3Dプリンターの導入
今回は、設計したケースを試作してみます。そこで、試作に当たって、3Dプリンターを導入します。購入したのは、以下の機種です。一緒にPLAタイプのフィラメントも購入しました。費用は30,690円でした。
・Creality Ender-3 V3 SE
・フィラメント PLA (黒・白 2パック)
使用可能フィラメント:PLA、PETG、PTU
久しぶりの大物の購入でした。上の袋に入っているのは、フィラメントです。最初はネット通販で購入手配しようとしましたが、リンクエラーになってしまいました。どうやら、直営店サイトがオープンになって、そちらからの購入に切り替わったことが理由でした。購入時の予定では1週間以上かかるようでしたが実際には3日後に配達されました。うれしい誤算でした。
緩衝材シートをめくると姿を現しました。精密機器だけあって、非常に丁寧できれいに梱包されています。期待できそうです。
マニュアル、電源ケーブル、工具類を収めた緩衝材を取ると、門構えのアームが出てきました。中央には、ベッドが見えます。
細かなパーツ類です。右上がコントロールパネルです。LCD画面とジョグダイアルが付いています。
早速組み立てます。ベッドにアームを立てます。組み立て動画によると最初にアームをベッドの裏からネジ留めしますが、先にベッドにアームを立てて、写真のように2本のネジを留めるとベッドとアームが仮固定されます。それから裏からのネジ留めをした方が組み立てやすくなると思います。
次に、写真のように床に敷いた緩衝材の上に寝かせることで、ベッドの裏からのネジ留めが容易にできます。仮固定していない状態なら2人で作業するのが確実です。
ネジ留めは、ベッドの裏の窪んだところに両側それぞれ3本を留めます。
ネジ留めが終わり正立した状態です。3万円そこそこのものとは思えないくらい重量もありしっかりしています。
後は、コントロールパネル、フィラメントを設置するラックの取り付け、ケーブル3か所の接続で終わりです。
組み立て終わったところです。組み立てるだけなら30分もあればできます。
最後にAC電源の電圧を選択します。115Vと230Vから115Vを選択します。のぞき窓の奥に見える赤いスイッチをマイナスドライバの先で115V側にスライドします。
フィラメントを準備します。
黒と白のフィラメントのセットです。1つが1㎏あります。
フィラメントの仕様は以下です。
・材質:PLA
・サイズ(径の太さ):1.75±0.03㎜
・ノズル温度:190~220℃
・ベッド温度:25~60℃
・印刷速度:40~80㎜/s
以下は、フィラメント材質の主なものです。以下の材料に金属などを混ぜたものなどもあります。3Dプリンターの機種を選ぶ際に、PTUが使えて低価格な機材を選びました。
黒のPLAフィラメントをセットして、ヘッドにフィラメントを通したところです。
ケースのボトムの試作
3Dプリンターの準備ができたので、いよいよケースを試作してみます。まずは、簡単そうなボトムから作成します。
最初にケースのボトムだけを表示させておき、他の部品は非表示にしておきます。DesginSpark Mechanicalには、3Dプリンター用のSTLファイルのエクスポート(出力)機能があります。
メニュー[デザイン]>[エクスポートオプション]>[3Dプリンタ用出力(*.stl)]をクリックします。他の部品を表示しておくとその部品までSTLファイル出力されてしまいます。
クリックするとSTLファイルを保存するフォルダ指定画面が表示されて、フォルダを指定して実行するとファイル拡張子がSTLのファイルが作成されます。
次に、「Creality Print」というアプリを使って、エクスポートしたSTLファイルを読み込ませて、スライスデータを作成します。「Creality Print」アプリは、3Dプリンターを購入すると同梱されているアプリです。最新版はCrealtiyの公式サイトからダウンロードできます。
購入した3Dプリンターは、FDM方式です。FDMとは、「Fused Deposition Modeling(熱溶解積層方式)」の略で、熱可塑性プラスチック材料を半液状に溶かし、コンピュータが制御する経路に沿って押出成形していくことで一層ごとに形状を構築します。簡単に言うとミルフィーユのように生地を重ねて形を作ります。ただし、生地のように平面ではなく糸を生クリームのように絞り出して断面の輪郭を倣い、輪郭の中も糸で埋め尽くして平面にします。それを何層にも積み重ねて立体形状にします。
例えば、0.1㎜の糸を1㎝(10㎜)の高さに積み上げようとすると、100層積み上げます。したがって、FDM方式による立体形状を作成するには時間がかかります。スライスデータというのは、一層一層積層していくためのデータです。
スライスデータをコマ送りにしたものです。これだけでも1200層弱の層があります。このデータを「Crealtiy Print」アプリが一瞬で作成してくれます。
この作成したスライスデータをSDカードに書き込んで、3Dプリンターに読み込ませます。
SDカードをセットしたら、コントロールパネルから「レベリング」を実行します。レベリングでは、ヘッドの予熱、ベッドの予熱を行います。ヘッドは、PLAを溶かすために205℃まで加熱します。ベッドは60℃まで加熱します。
予熱が完了すると、ベッドの水平出しをします。
ベッド全体を16点測定して、水平の誤差を測定して、補正します。LCD画面に16点の誤差が表示されていきます。緑色がOK、青色がちょっと誤差が大きいことを表しています。
左下が+0.5㎜程度、右上が-0.5㎜程度誤差があり、全体として左下から右上にかけて1㎜程度の誤差があることがわかります。
自動補正してくれるはずなので、今回調整はしません。また、形状は中央に構築されるので問題ないと判断しました。
レベリングが完了したら、印刷を実行します。印刷では、SDカードの中のファイルを選択して実行します。写真は実行し始めたところです。
こちらが印刷が終わったところです。所々、糸引いていますが後で取り除けば問題ないです。この印刷では、3時間かかりました。本当に3Dモデル通りにできました。3Dプリンターやるなあ!
ベッドから剥がして、少し手入れしたところです。ベッドから剥がすのが少し緊張しました。造形物は、プリントスチールシートの上に造形されます。このプリントスチールシートをベッドから剥がしてシートをグイっと曲げると、造形物がパリッと部分的に剥がれます。それをキッカケにして剥がしていきます。
ちなみにはがした面は全体的に白っぽくなってしまいます。しかたないです。後処理で研磨して塗装を考えたいと思います。まだまだ、部品があるので気長に印刷していきたいと思います。
まとめ
今回は、設計したケースのボトムを3Dプリンターで試作してみました。ファーストトライにしては上出来でした。自分で考えたものが簡単に形にできる3Dプリンターという道具はすごいなあ、と思いました。また、一つ道具を手に入れたのでDIYに活用していきたいと思います。
タイマー露光機作成は、まだまだ続きます。
作業時間:6時間(内訳:組み立て:1時間、データ作成:2時間、印刷:3時間)
費用合計:45,830円
項目 | 費用 | 備考 |
---|---|---|
Creality Ender-3 V3 SE | 27,690 | |
フィラメントパック | 3,000 | PLA 黒、白 |
タイマーリレーキット | 1,475 | DROK 時間遅延リレー |
R4エコノミーパック | 3,520 | 水現像タイプ、25cm×15cm、4枚 |
YC 紫外線ブラックライト | 3,753 | 395-405nmUV、60W |
HP OfficeJet200 Mobile | 4,500 | インクジェットプリンター |
インクカートリッジ 黒 | 1,882 | HP HP62 C2P04AA |